「スキンセント」──香りを超えたパーソナルなフレグランスの世界
ここ数年、香水業界において「スキンセント」と呼ばれる新しいトレンドが話題になっています。スキンセントとは、名前の通り「肌の香り」を意識したフレグランスのことを指します。従来の香水が花や果実、香辛料などの明快な香りを目指して作られているのに対し、スキンセントはより個人と密接に結びついた、独特で微細な香りを提案します。
スキンセントとは?
スキンセントは「肌に溶け込む香り」として、多くのブランドから新たな提案が続々と登場しています。肌に密接に寄り添い、その人独自の体臭と一緒に調和するような香りを目指しています。香りが消えてしまうギリギリのところで、他人に気づかれるか気づかれないかの微妙なラインに存在する香りは、親密さや自然さを強調します。まさに、自身の肌にぴったりフィットするセカンドスキンとでも言える存在です。
なぜスキンセントが人気なのか?
パンデミックによりソーシャルディスタンスが求められた現在、個人の領域感が高まり、相手を意識する香りよりも、自分自身が心地よいと感じる香りが求められるようになりました。その結果、スキンセントは「自己表現」の要素として再評価されています。また、TikTokなどのSNSでの若年層による香水のレビューやトレンド情報の拡散も大きく影響しており、これが特にジェネレーションZの香水使用率を大きく上げる一因となっています。これらの背景により、派手ではないが個性を大切にする香りとして、スキンセントが広がりを見せています。
注目のスキンセントブランド
いくつかのブランドがスキンセントの製品を積極的に展開しています。例えば、"DedCool"の「ミルク」はアンバー、ベルガモット、ホワイトムスクのベースノートから成り、軽やかに身体と交わる香りを生み出しています。また、「Arquiste」の「Peau」は、ロマン皇帝ハドリアヌスの若き愛人アンティノウスに捧げられた彫像からインスパイアを受けた作品であり、親密さや切なさを表現しています。 そのほか、"The Maker"の「Naked」や、"Escentric Molecules"の「Molecule 01」といった香水が、スキンセントとしてのカテゴリーに位置づけられ、好評を得ています。特に「Molecule 01」は、香りの強弱を自分の体臭に合わせて調節する一つの分子"Iso E Super"をベースにしており、あたかも自分自身の自然な体臭を強調するかのような香りを提供します。
スキンセントの未来
スキンセントはこれからもますます注目を集めることは間違いありません。その背景には単に香りとしての楽しみだけでなく、個人のアイデンティティや人間関係を深める手段としての香水の新しい位置づけが提案されています。これを通じて、香りが人々の心や感覚をどのように豊かにしていくのかという新たな可能性が提示されています。
まとめ
香水の世界において、スキンセントは一過性のトレンドにとどまらず、個人と密接に関わることで、新たな価値観を示しています。香水を選ぶ際には、このような個人に寄り添う香りが、これからのライフスタイルを豊かにしてくれるかもしれません。お店で見つけたスキンセント、愛用してみることで、あなた自身の香りの感覚を新たに発見してみてはいかがでしょうか。